高橋さんちのKOEDO低燃費生活

ホルムズ海峡封鎖で家が建てられなくなる!?建材供給の危機

ホルムズ海峡封鎖で家が建てられなくなる!?建材供給の危機

ホルムズ海峡が封鎖状態になり、「建材の値上がりで困っている」「入手できない」といった話を建築関係者から聞いたり、ニュースでも目にするようになりました。

ホルムズ海峡は、アラビア半島の北東とイランの南の間にある狭い海峡で、ペルシャ湾の出入り口となっています。

イスラエルと米国によるイラン攻撃が起因となって戦争が始まり、現在、イランが、ホルムズ海峡を通る船を制限・威嚇し、米国が船舶がイランの港に出入りする船を監視・阻止しているという状態が続いています。

その影響で、短期間に原油価格が急騰し、予定していた原材料や資材が届かないという事態になっています。そしてその影響は、ご承知のとおり日本の住宅建材の供給にも及んでいます。

「パレスチナ」「ホルムズ海峡」「私たちの生活」の関係

「パレスチナ問題」と「断熱」を両方取材しているのは珍しいと思いますが、講演ではいつも「パレスチナ問題は、日本の私たちの生活やさまざまな問題にもつながっている」と伝えています。今回は、それを悪い形で証明してしまいました。

「イラン攻撃やホルムズ海峡の封鎖が、どうパレスチナ問題に関係あるの?」という人もいるかもしれません。今回のイラン攻撃は、米国がイスラエルに巻き込まれて一緒に行ったものです。

イスラエルは、パレスチナや隣国のレバノンで、国際法違反の占領や人権侵害を繰り返してきました。その暴走がイランにも及んで、結果、日本で住宅が作れない、生活用品を含む物資が手に入らない、価格の高騰という形で表れているのです。

実は、パレスチナ問題は遠い場所の出来事ではなく、いろいろな形で僕たち一人ひとりにつながっていることです。もし少しでも興味を持ってもらえたら、ぜひ僕の著書『もしも君の町がガザだったら』(ポプラ社)を読んでみてください。

私たちの暮らしに直接的な影響を及ぼしているのは、イランによるホルムズ海峡の封鎖です。しかし、イスラエルが国際法違反の先制攻撃をしなければ、イランはそのようなことをしていませんでした。世界のルールを守らないイスラエルを、日本を含む国際社会が許してきたことが、私たちの苦しみにもつながっているのです。

米国がイスラエルを支援してきたことはご存知だと思います。でもなぜ日本が関係しているの?と疑問を持つ人もいるかもしれません。

イスラエルがガザで大勢の人を殺害している間に、日本の防衛省はイスラエル製の兵器を241億円輸入していました。虐殺を行っている政府から武器を買うということは、虐殺の協力者とみなされるかもしれません。こういうことに、関心を持つことが大事なのかなと思います。

影響を受けている住宅建材は?

本題に戻りますが、影響を受けている住宅建材とはどのようなものでしょうか。日本の住宅に使われる建材の多くは、「ナフサ」を原料とする石油化学製品に依存しています。

ナフサとは、原油を精製して得られる無色透明の液体で、プラスチックや合成樹脂、接着剤など、さまざまな石油化学製品の基礎原料となるものです。

ホルムズ海峡の封鎖状態が続いて原油やナフサの供給が滞ると、断熱材、塩ビ製品、シーリング材、接着剤、塗料、配管材といった建材の供給にも影響が及びます(もちろん建材だけでなく、あらゆる生活物資にも影響します)。

また、燃料価格の上昇が進むと、製造コストや輸送コストも増加して、建材の価格全体が押し上げられます。状況や品目によっては、資材価格が30〜40%も上昇した例もあります。

部品供給の停滞などを背景に、TOTOのユニットバスが一時的に出荷制限となったことはニュースでも取り上げられました。その後、段階的な再開がされているとのことですが、建築の現場では、工事の遅延や混乱が生じているケースもあります。

今後は、ユニットバスに限らず建材の価格の高騰や供給が不安定になるリスクが発生しています。これが長く続けば、日本で家が作れないという状況になりかねません。

エネルギー危機はすでに始まっていた

ご存知のとおり、今回のエネルギー危機は突然来たものではありません。僕が生まれた1973年のオイルショックでは、トイレットペーパーの買い占めなどのパニックが起こりました。

僕は現在52歳ですが、オギャアと生まれた時から今まで変わっていない、むしろ現在の方が石油の中東依存度が高いのです。この国は、50年間何をやってきたのか、と言いたいところです。(実際はオイルショック以降、日本は原発増設に邁進してきたのですが、それによる問題はそのうちまとめたいと思います)

現在の日本の一次エネルギーの自給率は約12%です。エネルギー自給率が低い国は、何らかの理由で国際価格の高騰が起きたり、石油が届かなくなったりするだけで、一気に危機に陥る可能性があります。

どんな対策ができるのか?

エネルギー危機の対策として、できることは何でしょうか。正直なところ、すぐにできることは限られています。

でも、長期的に見ると、対策は大きく二つしかありません。エネルギー自給率を上げること(つまり再生可能エネルギーを増やすこと)と、無駄なエネルギー消費を減らすこと(つまり省エネ)です。

しかし日本政府は、ガソリン価格の負担を抑えるための大規模な補助金を出したり、供給不安に備えて備蓄を放出したりしています。価格を調整することで、これまでと同じようにエネルギーを使える状況を維持しようとしていますが、それは「このまま何もしなくていい」という正常性バイアスを強めるだけの結果につながります。本来であれば、貯金(備蓄)を切り崩して生活している中で、より積極的に節約を呼びかけなければいけないはずです。

なお、ナフサ不足の関連で断熱材の値上がりも報じられています。しかし、全ての断熱材が同時に値上がりしているわけではありません。例えば、石油製品を使わない自然系(木質系など)の建材は、もともとの価格は高めではあるものの、今回、石油系の建材と同じような値上がりはしていないのです。

すぐには転換できることではありませんが、今回の危機は、(住宅分野に限らず)プラスチックを含めた石油製品からの脱却や、国産化への道筋を検討していくきっかけにしていくべきだと思います。

住宅に関連して、個人で取れる対策にはどんなものがあるでしょうか。

エネルギー危機の有無にかかわらず、家庭内のエネルギー消費を減らす、そして可能な範囲でエネルギーを自らつくるといった対策は有効です。

このブログで紹介してきたように、住宅の断熱性能を高めること、太陽光発電を設置することは必須で、さらに条件次第では、蓄電池を備えることも選択肢に入ります。技術的には、家庭内のエネルギーを自給することはそれほど難しくない時代になりました。それは今回のような事態を迎えても慌てなくていい、安全保障となるのです。

日本ではなぜか再エネに対する批判が強く、また断熱・気密の価値は過小評価されがちです。しかしホルムズ海峡に限らず、このような事態は今後も起こり得ます。エネルギーは無尽蔵に使えるもの、あるいは不足すれば買えばいいものではなく、国としても個人としても、自給率を高めることが安全保障になるという意識を持って、できることを実践する姿勢が大切だと感じています。

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