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冬の寒さ対策!建築士が指摘する断熱リフォームのポイントは?

冬の寒さ対策!建築士が指摘する断熱リフォームのポイントは?

エネルギーの高騰や寒波の到来で、今年は断熱の大切さの認知度がぐっと上がったように思います。わが家のご近所さんでもある、川越市在住の建築士、荒木牧人さん(maao)は、ずいぶん前から断熱に注目して、DIYから本格的な改修まで幅広く手掛けてきました。そんな荒木さんに、断熱の重要性とリフォームする際に気をつけるべきことについて、インタビュー形式で聞いてみました!

ぼくと荒木さん(右)

Q: なぜ断熱リフォームが大事なの?

断熱にこだわるようになったきっかけは、家の改修を依頼されたときに、無断熱の家がとても多いことに驚いたからです。でも多くの家主さんは断熱の意識がまったくないので、そこにお金をかける意義が理解できません。すると、せっかくリフォームしても見た目だけきれいにして終わってしまうため、家は寒いままです。

冬はすごく暖房費を支払わないといけないとあきらめている人もいます。家が寒くて暑いことで体調を崩したり、ヒートショックで亡くなる人がたくさんいます。建築士として僕も何とかしたいと思うようになりました。

また、いまは断熱がしっかりした高性能住宅も増えていますが、そのほとんどは新築です。僕は世の中の9割を占める既存住宅を何とかしなければならないと思っているので、リフォームの依頼を受けた際には必ず断熱をした方がいいですよと提案することにしています。いまは光熱費も上がっているので、断熱の効果をより実感できるはずです。

Q: 断熱リフォームの優先順位は?

断熱リフォームの優先順位の一番は窓です!家の中でもっとも外気が出入りする部分が窓だからです。窓を断熱すれば、窓際が寒くないといった体感をしやすいのでおすすめです。そして一番簡単で効果を感じられるのが、内窓をつけることです。(←内窓をつける意義と効果はこちらのブログ記事にもまとめています。) 

左側の窓は元の窓のまま。右側にはポリカーボネートの簡易内窓を設置(提供:荒木牧人)

内窓は、自分でDIYできる人なら手作りでやる方法もあります。でも、効果やクオリティを考えると建具屋さんにメーカーの窓をつけてもらった方がだんぜんいいと思います。

その理由は、古い家の場合は、立て付けが悪くて窓枠が歪んでいるケースがあるからです。その調整は素人では難しい。コストは、小さい窓ならひとつ3〜4万円、大きな掃き出し窓なら10万円くらいからあると思います。そう聞くと、高いからやらないという人もいますが、一度つけたらランニングコストをずっと抑えてくれるし、快適になるからぜひやってほしいですね。いまなら国が補助金を結構出しているのでやったほうがお得ですよ(参照:住宅省エネ2023キャンペーン)。

Q: 断熱リフォームで注意することは?

窓の断熱はとても大事なのですが、そもそも断熱がスカスカの家は、窓だけやってもまだ寒いです。じゃあ次は何をするか。寒さ対策としては、窓の次は床です。壁や天井も重要ですが、工事はどうしても大掛かりになってしまうので、大規模リフォームのときに一緒にやってほしいと思います。

また、家が大きいと、全部断熱リフォームをするとお金がかなりかかってしまいます。そこで、お住まいの方がご高齢なら、ゾーン断熱をお勧めしています。まず、コスパの良い窓はできる限り全部内窓をつけます。そして、リビングと寝室、そしてヒートショックを起こしやすい浴室、脱衣所、トイレといった、普段使い続けるエリアを中心に断熱するのが経済的です。命を守るためにも、絶対にやった方がいいと思います。

Q: 荒木さんのご自宅も断熱しているとか?

実は僕が家を建てた時は、断熱の意識がなかったので冬はすごく寒いんですよ。子どもたちからは、「お父さんは建築家なのに何で暖かい家にしてくれなかったの?」と言われて困りました(笑)。そこで、DIYで少しづつ断熱することにしました。うちの窓はアルミサッシのペアガラスです。アルミサッシは断熱性能が低いので、内窓をつけることにしました。

まず、小さめの窓は手作りの内窓をつけます。ガラス面はプラスチックダンボール、サッシは木枠でつくりました。手作りの内窓は、最終的には合計で10か所くらいになりました。

荒木さんが自宅にDIYで設置した内窓(提供:荒木牧人)

大きな掃き出し窓などは、手作りでは難しいので業者に頼んでメーカーの内窓をつけてもらいました。予算の関係で、1年に1か所ずつ入れました。いまは家中すべて終わっています。体感は全然変わりますね。

うちには子どもが4人いるのですが、そういう動きを見ているので、子どもたちも自分で体を動かして内窓づくりに参加するようになりました。それぞれ自分たちの部屋の内窓は、自分たちでDIYでつけたんです。(←DIY内窓のつくり方はいろいろありますが、こちらのブログ記事も参考にしてください。)

あとは、やはり内窓だけだと隙間ができやすいので、そこに隙間テープ(モヘア)を活用している。これがあるかないかでは効果はぜんぜん違います。子どもたちは体感で違いを学んでいるので、大きくなったら断熱しているエコハウスに住みたいと言っています。(←実は、荒木さんと子どもたちは、わが家と同じタイプのエコハウスに宿泊体験をしたこともあります。)

まとめ

荒木さんは、埼玉の地域レベルでも断熱の取り組みを実践しています。例えば、築100年を超える古民家をゲストハウス・カフェに改修したChabudai(ちゃぶだい)。ぼくもよく訪れています。ここでは、参加者を募り、DIYレベルで、壁や床の一部を断熱しました。

ちゃぶだいの床に断熱材を入れるワークショップ(提供:荒木牧人)

基本的に、古い日本家屋は断熱性はゼロなので、すごく寒いです。ただ、断熱した部分としてない部分にはっきりと差が出ることが体感できるので、やはり断熱は大事だなと思います。

また昨年(2022年)は、埼玉の建築士のグループ(さいたま断熱改修会議)が立ち上げた、学校の断熱ワークショップに、荒木さんも指導者として加わりました。さいたま市にある芝川小学校で学ぶ子どもたちも参加して、寒い教室の壁や窓、天井などを断熱改修しました。すでに暑さ寒さの改善効果も出ているようです。(こちらはその様子を伝える東京新聞の記事

(なお、学校の断熱改修については、ぼくも各地で取材しています。こちらのブログ記事も参考にしてください)

荒木さんは言います。「学校の断熱もそうですが、みんなでワイワイしながら、ゲーム感覚で面白くできると広がっていくんじゃないかと思います。断熱はその上から板を貼ったりするので目には見えなくなっちゃうけど、たくさんの人が訪れる場所が、体感できるレベルで断熱できていると、もっと身近になるはずです。僕はそういう場所を増やしていきたいと思っています」

壁の内側に断熱材を入れる作業(提供:荒木牧人)
プラスチックダンボールの内窓を設置する(提供:荒木牧人)

「断熱が当たり前の世の中になればいい」という荒木さん。社会からヒートショックをなくしたいと、日々、奮闘しています。「孫が、おじいちゃん、おばあちゃんに内窓をプレゼントするような社会になったらいいな」という言葉が印象的でした。

実は、ぼくは今年から「断熱ジャーナリスト」を名乗ることにしました(ノンフィクションライターも引き続き使いますが)。断熱は、ヒートショックを減らしたり、光熱費を下げたり、気候変動対策になったりと、いいことだらけです。ぼくは、荒木さんのように現場で断熱に真剣に取り組む人々の姿を伝える仕事もしっかりとやっていきたいと思います。

おわり

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