猛暑を超えて、酷暑の日々が続いています。そんな中で個人の住宅はもちろん、学校など子どもたちが過ごす場所の本格的な暑さ対策がより必要になってきています。

ぼくは、高性能住宅のモデルハウスを取材で宿泊体験をしたのがきっかけで、そのモデルハウスに暮らすことになり（詳しくはこちら）埼玉県民になりました。今回はその埼玉で、断熱改修に力を入れている「さいたま断熱改修会議」というネットワークをご紹介します。

さいたま断熱改修会議との出会いは、2022年の夏のことです。川越の友人で、会議のメンバーでもある建築士の荒木牧人さん（後ほどリンクに登場します）から、その年の夏に小学校の断熱改修をしたという話を聞き、何度か取材させていただきました。

さいたま断熱改修会議は、2019年に発足した埼玉県の工務店や建材を販売する事業者によるボランティア団体です。気候変動により暑さが厳しくなる中、断熱の重要性や効果を広めるために、啓発や断熱化を進めていこうとしています。中心となっているのは、高性能住宅を建ててきた佐藤工務店の佐藤喜夫さんで、断熱に力を入れている仲間の工務店や事業者が集まっています。

埼玉の夏の暑さは全国でも厳しい方で、学校の教室の暑さは半端ではありません。あるとき、地域や学校で活動している人から「教室があまりに暑いからどうにかしたい！」という相談を受けて、2022年の夏に、さいたま市にある小学校の最上階にある教室の断熱改修を、子どもたちと一緒に行いました。

天井や壁に断熱材を入れたり、窓に遮熱パネルを貼り付けたりしたことで、猛烈な暑さでエアコンが十分に効かなかった教室の室温が、5度〜8度も下がりました。子どもたちのアンケートでも「涼しくなり、授業に集中できるようになった」という喜びの声が聞かれました。

これまでは学校の断熱改修というと、冬の寒さ対策として注目されてきました（僕が取材した長野県の白馬高校の断熱改修プロジェクトについてはこちら）。しかし、この改修工事により夏の暑さ対策にも十分効果があることがよくわかりました。そして今年（24年）も、8月1日〜2日にかけて上尾市の小学校で断熱改修を行うことになっています。こうした経緯は、僕の新刊『断熱が日本を救う 健康・経済・省エネの切り札』でも紹介させていただきました。

さらに、さいたま断熱改修会議のすごいところは、こうしたワークショップをきっかけに、行政との連携も始めたところです。今年の5月に上尾市と「住宅の脱炭素化に向けた連携協定」を結び、市内の住宅や公共施設の断熱改修に力を入れていくことが決められました。このような工務店のグループが行政と連携するのは珍しいことですが、これをきっかけに、全国にも同様の動きが広がってほしいと思います。

なお、リフォーム業者には怪しい会社も多数含まれています。トラブルも発生しやすいので、断熱改修をする会社を探す際は、実績があり信頼できる施工店を選ぶことが重要です。断熱改修を考えている場合は、「業者断熱リフォームの業者を選ぶポイント」を参考にしてください。

また、さいたま断熱改修会議を紹介してくれた荒木さんが教えてくれた「建築士が指摘する断熱リフォームのポイント」もお読みください。

埼玉県内で断熱改修などを検討している方は、ぜひ「さいたま断熱改修会議」のホームページから問い合わせることをおすすめします。このように、一社の利益だけを求めるのではなく、地域全体の断熱化を積極的に進めている団体はなかなかないので、とても貴重な存在です。本当は全国各地にこういう団体があるといいなと思います。エコハウスが一棟増えただけでは社会は変わりませんが、学校、行政、地域全体で、既存住宅の断熱レベルを高めていくことで、社会を変えることができるからです。

さいたま断熱改修会議はボランティア団体なので、参加されている方たちが活動を続けていくのは大変だと思います。でも、だからこそ地域と信頼関係を築くこともできます。「ここに頼めば安心だ」という存在になることで、参加している工務店や事業者に断熱改修の依頼がされ、ビジネスが回るような流れになっていけば良いと思います。

川越市に住んでいることもあり、ぼくもさいたま断熱改修会議が関わる近隣の自治体でのイベントで、断熱の重要性についてのお話をさせていただいています。このような機会を通じて、地域に断熱の輪が広がっているのは素晴らしいことです。

それではまた！