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究極のエコハウス、パッシブハウスを見学!

究極のエコハウス、パッシブハウスを見学!

2月中旬に、軽井沢にある最新のパッシブハウスを見学してきました!今回訪れたのは、昨年建ったばかりの住宅で、パッシブハウス・ジャパン代表理事の森みわさんが自ら設計したご自宅になります。

「パッシブハウス」とは、ドイツ発祥の究極のエコハウスのことです。高気密高断熱はもちろんのこと、季節やその地域などに応じて日射の取り込みを徹底的に計算して、最低限の冷暖房設備で快適に過ごすことができます。

無垢材と大開口の素敵なリビング(提供:KEY ARCHITECTS)

コンセプトは、わが家のようなエコハウスと同じですが、パッシブハウスの場合は、正式な数値の基準が決められています。そのひとつは「年間の冷暖房需要がそれぞれ1平方メートルあたり15キロワット時/㎡以下」というものです。

日本の既存住宅の中では、これまではそれなりに良い性能とされてきた断熱等級4の住宅の年間暖房負荷は127.8キロワット/時(東京などのエリアの場合)なので、パッシブハウスは桁違いの性能と言えます。

他にもいくつかある条件をクリアして、やっとパッシブハウスの認定を受けることができます。なおこのお宅は、できて間もないのでパッシブハウス認定の申請を行うのはこれからだそうですが、性能面は間違いなさそうです。

この家を建てた森みわさんは、ドイツから日本にパッシブハウスを持ってきた方で、パッシブハウス・ジャパンを設立して、すでに30軒以上のパッシブハウスの計画に携わっています。

訪問当日は最高気温3.8℃の寒い日で、道にはまだ雪が残っていました。最寄り駅に迎えにきてくれたスタッフの方が乗っていた車はEV!さすがです。

森の中を車で入っていくと、ドーンと素敵なデザインの家!しかし、僕の目が釘付けになったのは、軒先の大きな太陽熱温水器のパイプです。わが家は後付けが難しいのでついていませんが、太陽熱温水器(太陽の熱を使ってお湯を作る、効率がとても良い!)を推している僕としては、ちょっと興奮しました。

庭先の太陽熱温水器(撮影:高橋真樹)

太陽熱温水器ってなに?という方は、僕が以前書いた記事「脱炭素の切り札?いま注目の『太陽熱温水器』とは」をご覧ください。

家の話に戻りますが、「パッシブハウス」というと、エネルギー効率の話ばかりされがちですが、今回のお宅はデザイン性が本当に素晴らしかったです。

階段の踊り場からリビングを眺める(提供:KEY ARCHITECTS)

1階は開放感あふれるキッチンとリビング。すごく大きくて見晴らしの良い窓からは、太陽光がさんさんと降り注いでいました。階段から見える大きなコーナーガラスと、吊り下がるペンダント照明も目をひきました。

(提供:KEY ARCHITECTS)

実はこの家は角が南向きになっているので、そこから最大限、日射を取り込むために階段を斜めの方向に向けて、階段を上がった所に日が当たるようにしているのだそうです。

窓は超高性能な木製サッシで、ガラスはフランスのサンゴバン社の高透過ガラスとLow-E技術を使ったトリプルガラスです。国内メーカーのトリプルガラスの窓に比べて映り込みが少なく、周囲の森の景色がきれいに見えるため採用したとのことです。

ガラスが入っている高性能木製サッシ部分は、長野県にある山崎屋木工製作所のもの。こちらも以前取材していますが、大変な努力を重ねて世界基準の木製サッシをつくっている素晴らしいメーカーです。

詳しくは、こちらの記事をどうぞ!→「地域産材で世界レベルの木製サッシを!長野県千曲市/山崎木工製作所

この家には大きな窓がたくさんありますが、窓際でも寒さはまったく感じず、のんびりとくつろぐことができます。

標高が高い軽井沢の冬は、実は札幌と同じくらい寒い日も多いようです。にもかかわらず、このお宅は日中の日射を取り込んで、夜もほぼ無暖房でも20℃以上を維持できる仕組みになっています。暖房用に一種換気に組み込まれたエアコンは設置されていますが、実際にはほとんど使われていないとのことでした。

熱画像で壁の中に張り巡らされたパイプの温度を確認する(提供:木下史朗)

ユニークなのは、補助暖房として土壁の中に温水パイプをめぐらせる輻射熱の暖房が使われている点です。熱源についてはこの後紹介します。

実際、ぼくが訪れた日も補助暖房だけでした。また森さんは2拠点生活をしているので、家を留守にすることも多く、最近も2週間不在にしたこともあります。それでも、室温が16℃までしか下がらなかったそうです。軽井沢の真冬に2週間無暖房で16℃というのは、信じられない性能です!

見えない部分の断熱材の厚みについても紹介します。壁には複数の断熱材を組み合わせて、合計26センチの断熱材が入っています。以前は40センチの壁厚になるほどの断熱材を使ったこともあるそうですが、断熱材や窓の性能が上がったことで、以前より薄くて済むようになったそうです。

天井には断熱材が45センチも!入っています。これはかなりの厚みです。床は基礎外断熱で10センチ、基礎の立ち上がり部分は外断熱と内断熱を併用して合計20センチ入れているとのこと。これもすごい厚みです。もちろん断熱材の種類によっても性能が異なるので、厚ければ良いという単純な話ではありませんが、それでもこの厚みはインパクトがありますね。

          分厚い壁の断面図。3種類の断熱材を使用(提供:KEY ARCHITECTS)

給湯には、先ほどぼくが興奮した太陽熱温水器を活用しています。春から秋はこれだけで十分に温水をまかなえますが、冬はさすがに熱量が不足します。一般的に、太陽熱温水器で熱が足りない場合は、ガスの給湯器が併用されます。しかし、森さんは脱炭素をめざしていますからガスは使いません。代わりに使っているのがペレットストーブの熱です。

温水が足りなくなると、ペレットストーブでお湯が沸かされます。そこで余ったお湯が土壁内の補助暖房として使われる仕組みです。太陽熱とペレットという自然エネルギーだけで、給湯と暖房を全てまかなっているのは素晴らしいですね。しかも、ペレットストーブはスマホで操作できるので、家から離れていても着火してお湯を沸かすことができます。

この家にも太陽光発電は設置されていますが、容量は3.8キロワットという最小限のサイズ。それでも、暖房などに電気を使うことがないので、昼間の電気は十分にまかなうことができます。

いまは太陽光をたくさん載せる家が主流になっていますが、森さんはあまり過剰に太陽光をつけなくても、必要なエネルギーの大半をまかなえる家にしたかったとのことです。なお、EVから家に給電できるV2Hも導入しているので、停電などの緊急時には、EVが蓄電池代わりにもなり安心です。

浴室や寝室のある2階も見せてもらいました。こちらはグレーの塗り壁とドアでシックな印象に。

(提供:KEY ARCHITECTS)

浴室につながるドアの取手は蝦夷鹿の角が利用されていました。

(提供:KEY ARCHITECTS)

渡された資料には「突き刺さる方が続出しているので十分ご注意ください」とあったのですが、油断していたぼくも見事に刺さりました(笑)。怪我したわけではないのでご安心を!

各部屋はとても静かでぐっすり眠れそうです。森の中で、こんな素敵な家に住んでいたら、きっと心も身体も癒されますね。立地と景色が、道路と電線に囲まれたわが家との最大の違いかもしれません(涙)!

コストについては、他では取り組んでいない独自のシステムなどを取り入れているので、一般的なエコハウスの価格よりもかかっていることは確かです。しかし、こうしたトップレベルの設計者が新しいチャレンジをすることで、全体の性能があがることにつながったり、コストの安い暖房システムの開発につながったりする可能性もあります。そのような意味でも、今回訪問させてもらって本当に勉強になりました。

(提供:KEY ARCHITECTS)

パッシブハウスといっても、一軒一軒デザインも性能も違います。エコハウスの性能を理解するには、体感するのが何よりです。ぜひ気軽に訪れてその性能を体感してほしいと思っています(できれば真冬に)。

パッシブハウスジャパンは、毎年2月の寒い時期に「PASSIVEHOUSE OPENWEEKS」を開催しています。ぼくもその枠で訪問させていただきました。今年のオープンウィークは3月3日までなのでもう終わりですが、来年も開催するはずです。また毎年11月の第二週には国際パッシブハウス・オープンデーというイベントも企画され、国内のパッシブハウスも一般公開されるそうです。ご興味がある方はパッシブハウスジャパンのHPでご確認ください。

森さん、どうもありがとうございました!

(提供:KEY ARCHITECTS)

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