
2月の初旬、おそらく日本で最も断熱されているキリスト教会を取材してきました!ぼくが発起人になって始めた「断熱を体感し発信するゆるやかなグループ」である「断熱クラブ」(結成時の話はこちら)のメンバーで見学させてもらいました。
その日は、残念ながら(笑)、日中の気温が12℃と、2月初めにしては暖かく、体感での効果は感じにくい日でした。それでも、建物を見るだけで、断熱に力を入れていることはよくわかります。
今回、おじゃましたのは、埼玉県の行田市にある「行田カベナント教会」です。
この教会は、断熱クラブのメンバーでもある荒木牧人さんが設計した建物です(荒木さんに聞いた断熱リフォームのポイントもぜひお読みください)。
既存の教会が老朽化して建て替えることから、新築の依頼となりました。完成したのは2024年8月。それから1年半くらい経っているので、実際の居心地や使い勝手についても聞くことができました。
建物は、玄関ホール、礼拝堂、多目的室、事務室のような部屋が2つあります。建物の面積は、小屋裏も合わせて230平方メートルと、比較的コンパクトな教会です。

元々の建物は、収納場所が少ないなど、使い勝手が悪かったとのこと。また開口部(窓)が多く、ほぼ無断熱だったので、夏の暑さや冬の寒さも課題でした。教会というと冬に寒い印象がありますが、本当に寒かったのですね。
設計プロセスは?
設計にあたり、関係者のヒアリングから丁寧に行い、意見を出し合って進めました。壁に付箋を貼って集めた意見の中には、「すべり台が欲しい」(!)「高さ6,000メートルの建物にしたい」(!?)という子どもたちからのアイディアもあったそうです。(こういうこと!?↓)

意見をまとめて形にするのは大変です。途中で変更のリクエストもあったりするなど、建設プロセスは予定より1年も長くなってしまいました。その分、皆さんは今の教会に喜んでいて、みんなで作ったという手応えが感じられるそうです。
教会の見学開始!
こちらが礼拝堂です。礼拝堂の正面を見上げると十字架型の窓があり、そこから青空が見えます。その設計が人気です。横にはパイプオルガンもあります。


そしてこちらが多目的室です。窓が大きくて明るいです。


ドアや窓はどうなっているでしょうか?
ドアは高断熱仕様になっていますが、高性能の建物には珍しい両開きドアです。これは、教会なので棺が通れる幅が必要だからだそうです。

窓は、南面については冬の日射取得を重視して、ペアガラスの樹脂サッシの窓を採用しました。夏は直射日光が入りますが、ハニカムブラインドで日射を遮ります。あとの3面はトリプルガラス樹脂サッシの窓になっています。窓を見ると、断熱材がたくさん入っているのがわかりますね。

なお、換気扇は第一種熱交換換気(ダクト式)を採用しています。
教会を利用している人たちの話
以前の建物との違いについて、教会を利用している人たちから話を聞くことができました。
前は冬の寒さが厳しく、暖房を利用していても、礼拝中は足元がすごく寒かったそうです。
使用していた暖房器具はエアコン5台に加えて、石油ストーブを2台持ち込んでいました。暖房しても熱が上に入ってしまうので、エネルギー効率が悪いし、快適ではない状態でした。
逆に、夏は掃き出し窓からの日射を遮る仕組みがなかったので、とても暑くなっていました。それが、新しい建物では冬は暖かく、夏は涼しくなったと評判です。

しかも今使っている冷暖房機器は、家庭用エアコン(6畳用)を3台のみです。礼拝堂と多目的室の床下に2台(冬用)と、小屋裏に1台(夏用)を使っています。
冬の早朝のお祈りでも、室内に入ってからエアコンをつければ十分快適になりました。事前にエアコンの予約運転をする必要はありません。長時間の礼拝の場合も、足元の冷えや「今日は寒かったね」という声を聞かなくなったそうです。
もちろん、光熱費も大きく削減できています。冬の間、月に3〜4万円かかっていたのが、今は6,000円〜1万円になったそうです(これは、照明や冷蔵庫といった、冷暖房費以外も含みます)。
音について
以前の教会は、外の音がまる聞こえになっていました。ちょうど、礼拝の時間にちり紙交換のトラックが通り、牧師さんのお話が聞こえないということもよくありました。教会の前を通る時には、ボリュームを小さくして欲しいと交渉したこともあるそうです。
新築後は、外の騒音も気にならなくなり、中の音も漏れにくくなりました。さらにパイプオルガンの音の反響も良くなったと評判です。

この教会に来るパイプオルガンの調律師の方は、全国の教会で調律をしていますが、音響面だけでなく、パイプオルガンの管理面でも、断熱して温度や湿度が安定していることはとても重要だとおっしゃっていたそうです。
その他の工夫は?
実は、教会があるエリアはハザードエリアで、2015年、2019年の大雨では床下浸水していました。そこで、荒木さんは基礎を70センチ高くするという水害対策を行いました。近年は、予想以上の大雨になる可能性があるので大事ですね。
面白いのは、エアコンを設置している小屋裏は、収納以外にも使えるようになっていることです。

ぐるりと1周できるようになっていて、本棚もあり、子供の遊び場としても人気になっています。上から礼拝堂にいる人たちに「ヤッホー!」と手を振ることができます。
すべり台はなくても、子どもが楽しく過ごせる場所という意味で、願いが一つ叶えられたのかもしれません。家族で通う場所に、そのようなスペースがあるのは大事ですね。
今後の課題は?
こんなに快適になった教会ですが、そこに来る人が、「断熱・気密で快適になった」ことを理解しているかというと、そうではありませんでした。
今回、ぼくたちの取材を受けて、利用する人たちも「荒木さんの設計がすごいとは思っていましたけど、断熱がすごいから快適なんだね」と認識を新たにしていました。荒木さんも、「これをきっかけに、断熱が大事という話が教会内にも広まればいいと思います」と話していました。
ぼくの感想
今回、この教会が断熱されたのは、偶然でした。埼玉在住で、クリスチャンで、設計士、というつながりで依頼がきた荒木さんが、たまたま断熱に力を入れている人だった、という組み合わせで、こんなにすばらしい教会になったからです。そんな確率、かなりレアです。ある意味、奇跡的だと思いました。

教会は、住宅のように24時間使う建物ではありません。しかし、礼拝や葬儀など、一度に多くの人が集まります。その時にひどく暑かったり寒かったりしたら、礼拝や葬儀に集中しきれません。そういう意味では教会にとっても、断熱は大事なんだなと感じました。
また、教会という誰でも訪れることができる場所で、断熱が体験できるというのは、とても意義あることです。
これからも、住宅以外の建物でも、どんどん断熱が広まっていくことを期待しています!
荒木さん、教会の皆さん、どうもありがとうございました!




