高橋さんちのKOEDO低燃費生活

「断熱」で備える、猛暑と気候変動の時代

約5分
「断熱」で備える、猛暑と気候変動の時代

この夏は命の危険を感じるほどの暑さが続きました。まもなく9月になりますが、暑さはまだまだ続きそうです。今日は、猛暑や気候変動に関連する報道について思うこと、気候変動対策としての断熱について書きます。

これまでもずっと気になっていたのですが、日本のメディアが猛暑(酷暑)の報道をするときに見るのは、最高気温が〜℃、とかどこが一番暑いとか、その場しのぎの熱中症対策、「暑いです〜」という街の人の感想ばかりで、猛暑の原因や根本的な対策に言及することはほぼありません。

実際、ぼくがコメンテーターをしている朝日新聞の記事でキーワード検索したら、「猛暑」だけだと2,448件、「猛暑」と「気候変動」だと262件、「猛暑」と「温暖化」だと319件でした。他の調査でも同じようなデータが出ています。

ただ「今日も暑いですね」という猛暑の話と、気候変動についての話が別物として扱われていると、自分の生活にも大きな影響を与える気候危機が、人々にとって自分事にならず、社会の仕組みや現状も変わらず、むしろ気候変動を悪化させてしまいます。

実は、こういう問題は以前から指摘されていて、2024年には気候変動に危機感を持った気象予報士・気象キャスターが、気象と気候変動を関連づけて発信するべきだと共同声明を出しています(詳しくはこちら)。しかし、何も変わっていないのが現実です。

メディアでよく聞くのが「この暑さはいつまで続くのでしょうか」という質問です。秋になれば一旦涼しくなりますが、長期的に見ると、残念ながら、今後、地球全体が暑くなり続けることは間違いありません。

ここで、「気候ストライプ」を紹介します。

これは、1850年から2024年までの世界の平均気温を視覚的にわかるように色付けしたものです。温度が低いと青っぽく、高いと赤っぽくなっていて、これを見ると近年の気温の上がり方が、数十年前とは明らかに違うことがわかります。

過去の温度に戻ることはなく、この数年だけの「異常気象」でもないのです。気候ストライプは、2025年の猛暑が、5年後、10年後に「あの頃はまだ涼しかった」と言われるような未来を示しています。

近年の猛暑は命に関わることで、気候変動は経済や社会活動すべてにダメージを与えます。対策は必須なのですが、日本では「環境対策や気候変動対策をすると生活や経済が犠牲になる」という誤解が広く定着しています。

2024年の衆議院選前には、それを象徴するようなアンケートがありました。

朝日新聞と東京大学谷口研究室が共同で行った調査(朝日新聞(2024)「朝日新聞ボートマッチ」)で、では、衆議院選の候補者に対して、「気候変動問題に対応」と「生活水準の維持」を対立軸にして、どちらを優先するかを問いました。

まったくの誤解に基づいて、メディアと研究者が政治家にこのような質問をしているのは大問題です。(詳しくは日本若者協議会が出した意見書を参考にしてください。)なお、このような設問をしているのは朝日新聞だけでないですし、2025年の参院選でも同じような質問がされています。

でも実際は、気候変動の対策をしないことが社会や経済、人々の生活を脅かしつつあり、何もしなければ、今後、確実に破壊していく。社会全体でそういう認識を共有する必要があります。

気候変動対策と経済や生活は、対立するものでも、矛盾するものでもありません。ヨーロッパなどでは、その認識が共有されて、政府の政策や企業の方針に広く取り込まれています。ぼくの著書『「断熱」が日本を救う 健康、経済、省エネの切り札』に詳しく書いていますので、興味がある方はぜひ読んでみてください。

ほぼ前置きになりましたが、いろいろな気候変動対策がある中で、「住宅や建物の断熱」は、気候変動対策と、経済や生活の向上を両立できる、とてもわかりやすい例です。

気候変動対策は、大きく分けて「緩和」「適応」の2つがあります。「緩和」とは、温室効果ガスを減らすことで、未来の温暖化を少しでも和らげる取り組みです。「適応」とは、避けられない温暖化の影響に備え、被害を減らし生活を守る取り組みです。

このブログで何度も伝えてきましたが、断熱をすると、暖房や冷房のためのエネルギーが大幅に減り、CO2の排出が減ります。これは立派な気候変動対策(緩和)です。でも、断熱することで、住まい手はより快適に暮らすことができますし、初期投資は回収できるので経済的でもあります。

また、適応の面でも、気候変動の影響である昨今の猛暑から、(消費エネルギーを増やさずに)自分や家族を守ることができます。

これは家庭の例ですが、同じ発想を社会全体に広げれば、暮らしと地球の両方に大きなプラスになることがわかります。生活と気候変動対策を同時に実現することは可能なのです。

これから、少しずつ気温が下がって過ごしやすくなると、夏の酷暑のことを忘れがちです。でも、過ごしやすい秋は断熱対策をするのにぴったりの季節です。気候変動の影響は温暖化だけではなく、冬に極端な寒さや大雪が起こりやすくなるという側面もあります。

寒い冬、そして来年の暑い夏に向けて、WIN-WINの断熱対策をしていきましょう!

コメントを残す

*
*
* (公開されません)

CAPTCHA


ABOUT

Profile image
ブログについて
See more info
Profile image
家について
See more info
Profile image
高橋さんちのひとびと
See more info

見取り図