高橋さんちのKOEDO低燃費生活

断熱改修で生まれ変わったサステナブルなお宿

断熱改修で生まれ変わったサステナブルなお宿

今日は断熱された素敵なお宿の紹介です。7月に長野県白馬村にあるサステナブルな宿に泊まってきました!

白馬はスキーなどのウィンタースポーツで有名ですが、近年は気候変動の影響で雪が減り、スキー産業が大打撃を受けています。そのため、アウトドアスポーツを愛する人たちを中心にPOW(=Protect Our Winters)というグループができて、勉強会やセミナーなどを行っています。

また、村民の関心も高く、高校生が呼びかけて気候マーチが行われたり、白馬高校で断熱改修プロジェクトが行われました。(以前、白馬高校で行われた断熱改修の話はこちら)そんな流れから、僕も講演に呼んでもらったり、取材にも訪れています。

今回は観光事業者を中心に立ち上がったグループのお招きで、白馬エリアの観光事業者の皆さんに、3日連続でSDGsのテーマで講演をさせてもらったのですが、その時に泊まらせてもらったお宿がすごいんです!

森に囲まれた「IL BOSCO(イル・ボスコ)」というお宿は、白馬の自然を満喫するのにぴったりな場所にあります。オーナーの宗川公紀さんはイタリアンのコックで、地元の食材で作った美味しい食事が自慢です。

BOSCOの宿主、宗川公紀さん

そして宗川さんは、宿を本格的に断熱改修して、宿を快適にした上で、使用するエネルギーを大幅に減らすことにしました。さらに数年前に載せた太陽光パネルや、地域の間伐材の薪を使った薪ボイラー、薪ストーブなどと合わせて、宿で使うエネルギーを自然エネルギー中心にまかなうことをめざしました。また、断熱がきちんとされた建物は、長期間傷まないという効果もあります。寒さが厳しい白馬でも、地域外からのエネルギーをほとんど買わずに、60年先も快適に過ごせる宿をつくるプロジェクトなのです。

宗川さんは、この宿の3代目オーナーですが、以前はスペースが広いこともあって冬は非常に寒く、光熱費もかさんでいました。

壁を剥がして断熱材を入れる工事の様子(提供:宗川公紀)
高性能グラスウールが20センチ以上追加された(提供:宗川公紀)

断熱改修では、まず、立派なヒバの無垢材でできた巨大な外壁を剥がして、断熱材をドカンと入れました。また、天井にはわが家と同じセルロースファイバーをこれまたドカンと入れています(セルロースファイバーの工場を訪れたときの記事はこちら

さらに重要なのは、熱が一番逃げやすい開口部です。その対策として、吹き抜けまで続く大きな窓をすべてトリプルガラスに交換しています。他の窓も多くがトリプルガラスに変更になりました。サッシは木製や樹脂です。また、寒さがきつかった引き違いの窓は、宗川さんが発案したオリジナルの断熱窓に交換しました。各部屋の窓ももちろん断熱仕様です。

と、説明するのは簡単ですが、断熱工事は難航したそうです。何よりスペースが広いので大変です。また、当初、大工さんたちにも「まだまだ使えるのに、こんな立派な壁を剥がすんですか?」とか「ここまでやる必要あるの?」とか、言われたりもしました。宗川さん自身も悩みましたが、60年先のことを考えた耐久性、耐震性、気密性などを総合的に考慮して、剥がす決断をしました。

改修工事を請け負った工務店のメンバーと(提供:宗川公紀)

そして、宗川さんは、そうやって、工程をひとつずつ大工さんたちと頭を捻りながら、一歩ずつ断熱工事を進めていきました。

僕が宿泊したときの感想は、とにかくこの規模の建物を個人で改修する気合いがものすごいなと思いました。宗川さんは勉強を重ねて、多額の資金を投入してこの宿を改修したのですが、背景には、白馬を気候変動から守りたい、そして将来にわたってこの建物を大切にしたいという強い気持ちを感じました。

また、初期投資がかかったとしても、宿が快適になり、光熱費が大幅に削減されること、さらに長期間大事に使い、次世代にこの建物をいい状態で引き継げるようにすることが、宿の経営にとってもプラスになると決断し、実行したことは、素晴らしいことだと思いました。

僕が宿泊したのは夏でしたが、冬の白馬では、断熱されていない建物だと相当な寒さになります。BOSCOでも、改修前は薪ストーブをつけてもその周りしか暖まらず、ほんとうに寒かったとのこと。でも、今年の冬はまったく違う過ごし方ができるのではないかと期待しています。

僕が泊まった部屋空の景色。眺めは最高!

実は宗川さん、僕が数年前に白馬でエネルギー問題の講演をしたときに参加されていました。そして、それがきっかけとなって、このような大々的な断熱改修と太陽光発電の設置を決めたということです。僕が果たした役割なんてささやかなものでしかありませんが、それでもこんなすてきな宿の誕生に少しでもかかっていることを知って、めちゃめちゃ嬉しく思いました。

僕は年間50回以上講演しています。そして参加された方に向けて、必ず伝えているメッセージがあります。「話を聞くだけではなく、小さなことでもいいから行動につなげてほしい」というものです。でも、たいていの人は「いい話を聞きました」で終わってしまうのです。そんな中、宗川さんは僕の話をヒントに、自分で勉強して覚悟を持って行動につなげてくれました。現実を変えていくのは、いつもこういう人の力なんですね。

白馬のお宿「IL BOSCO」は、喧騒から離れた森に囲まれた環境を思う存分楽しめる所です。窓も大きく、僕が今回したように宿で過ごしているだけでも豊かな気持ちになることができます。ワーケーションにもいいですよね。レンタル自転車を貸し出してくれるので、移動もエコにすることが可能です。

そして何より、宗川さん自慢のイタリアンを食べてみてください!パン(フォカッチャ)もすごくおいしかったです。こう書いているうちにまた行きたくなってきました!

僕が訪れた2022年7月前半は、まだ少し改装部分が残っていましたが、10月現在は既に完成しています。白馬に行くときには、ぜひ泊まってみてくださいね!(IL BOSCOは、ゆったり過ごしてもらうため3泊以上の宿泊が条件となっているとのことです)

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