
今回は、いきなりクイズです!
Q: 家に20畳のLDK(リビング・ダイニング・キッチン)の部屋があります。部屋を温めるのに何畳用のエアコンが必要だと思いますか?
「そりゃ、20畳の部屋だから20畳用でしょ?」と思うのではないでしょうか。
でも、実は違います!
必要なエアコンの性能は、家の断熱性能によってまったく異なるからです。今日は、住宅の断熱性能とエアコンの必要能力(畳数)の関係について説明します。
住宅の断熱性能・断熱等級とは?

まず、住宅には「断熱等級」というものがあります。そして現在、日本では等級1〜7に分かれています。断熱等級1は「畳と床を外したらその下は土!」といった、1980年以前のまだ断熱に関する基準がない時代の住宅です。
無断熱なので、「断熱等級1」というよりも、「0」と言いたいレベルですが、実は日本の住宅の1/4はこの等級に該当します。
そして、現在新しく建てられている住宅の基本的なレベルは、「断熱等級4」です。これは、2025年4月から建てられている新築住宅の最低基準となっています(詳しくはこちら)。
なお、しっかりとした家を建てている工務店や専門家が勧めているのは、「断熱等級6」以上の家です。「断熱等級4」は、2022年の途中までは、日本の国が定めた「最高等級」だったのですが、国際的にはとっても寒くて暑い、つまり断熱が不十分な家でしかありません。

国際的に比較して、最低限断熱されているというのが、「断熱等級6」以上になります。
厳密に言えば、家の暑さ、寒さに関わる性能は、断熱等級だけでなく、気密と換気、日射遮蔽と日射取得の工夫によっても変わってきます。ただ、この記事ではわかりやすくするため、ざっくりとした目安として、無断熱の家(断熱等級1)、現在の一般的な家(断熱等級4)、きちんと断熱された家(断熱等級6)の3つのレベルで比べてみることにします。
エアコン畳数表示とは?
では、次にエアコンについて見てみましょう。
購入時には「〜畳用」と説明されていますが、実際には、部屋を暖める(または冷やす)ために必要なエアコンの出力は、住宅の断熱性能によってまったく異なります。どういうことでしょうか?
※今回の記事では「暖める」という言葉を使いますが、冷房も同様の考え方ができます。
実は、現在のエアコンの畳数表示は、1964年に定められた基準に基づいています。これは、断熱に関する基準が全くなかった時代の「木造無断熱の平屋住宅」を前提としていて、60年以上改定されていません。
ということは、20畳用のエアコンという基準は、断熱等級1(無断熱の家)の20畳の部屋を温めるのに必要な出力だということです。
先ほど書いたように、断熱性能が高ければ、20畳の広さがあっても、それほどの出力は不要ありません。

ざっくりとしたイメージをお伝えすると、
断熱等級4の家の場合、20畳のリビングは14畳用のエアコンで十分暖めることができます。20畳用のエアコンに比べて、出力を30%小さなものにできるのです。
さらに断熱等級6の家であれば、6畳用のエアコンで十分。なんと、出力を70%減らすことができます。
※厳密には、木造か鉄筋か、日射や窓の数、サイズなどといった条件の違いにより異なります。
なお、わが家の場合、断熱等級7ですが、家全体の空間を1台のエアコンで暖めたり、涼しくしたりできています。部屋が区切られていないので、何畳とは言えないのですが、畳数に換算すると50畳ちょっとくらいのイメージです。

でも、使っているエアコンは10畳用。実際のスペースの5分の一以下の出力です。暖房、冷房ともに出力を強にすることはありません(わが家のエアコンの使い方については、以前書いた記事をお読みください)。ともかく、それくらい断熱性能によって変わるということです。
念の為、余裕を持って10畳用にしましたが、実際には8畳用や6畳用でも十分暖かく(涼しく)過ごせると思っています。なお、一軒の家に必要なエアコンの台数については、部屋の間取りにも関係するので一概には言えませんが、わが家のように大空間で空気が循環しやすい高断熱住宅では、1台分の出力でも十分です。

そう考えると、多くの消費者が自宅の断熱性能に見合わない、過剰な出力の高い製品を購入させられている可能性があります。もちろん畳数表示の多い製品の方が値段が高くなります。一般的に、20畳用のエアコンと6畳用のエアコンとでは、10万円以上の価格差があります。
初期投資だけではありません。出力が大きすぎると運転中にも無駄なエネルギーがかかります。また、一般的な家には複数台のエアコンがあるので、更新する際の費用も高くなってしまいます。
新規で設置する場合はもちろんですが、買い替えのときにも、自分の住宅の断熱性能に合わせたエアコンを検討して欲しいと思います。
AIに聞いてみたら…!
エアコンを購入するときには、ついつい出力が多めのものを選びがちです。僕もそうでしたが、「万が一、出力が足りなかったらどうしよう?」と心配になりますよね。
しかも、一般的なアドバイスは「カタログの畳数表示を参考にしつつ、実際の畳数より少し大きいものを選ぶのがおすすめ」と言われることもあります。

ちょっと気になってAIにも聞いてみましたが、やはり少し大きいものを勧められました(笑)。
ツッコミを入れてみたら、「高断熱住宅では表示畳数どおり、または1ランク下でも可」と言われました。しかし、「築年数が20年以上の住宅は、表示畳数より1ランク上が無難」と言われました。そして、「迷ったら、高断熱 → 表示どおり、断熱弱め → 1サイズ上」と、やはり大きいものを推してきました。
ここでのポイントは、AIの考える「高断熱住宅」の基準が、あいまいであることです。数年前までの日本では、断熱等級4でさえ「高断熱」などと言われていました。その認識であれば、この回答はそれほど間違っていないかもしれませんが、現在の「高断熱住宅」の基準は大きくレベルが上がっているので、まるでずれてしまっています。

さらに、吹き抜けがある家についても聞いてみると、「吹き抜けがあったら出力が大きい方がいい」とか、「エアコンの「〇畳用」は断熱基準が今より低かった時代の住宅を前提に作られています」と言いながらも「古い住宅は表示どおりでも不足」などという事実と異なる記載が多くなっていました。
実際は、高断熱であれば吹き抜けがあっても寒くはならないので出力を大きくする必要はありません。また、先ほど説明したように、エアコンの出力は古い住宅に合わせて畳数設定されているので、どんなに性能の悪い住宅であっても、実際の畳数を上回る出力のエアコンを選ぶのは過剰投資となってしまいます。
AIのアドバイスは、住宅性能に関するよくある誤解(一般的に出回っている情報)に基づいて回答がまとめられているという印象を受けました。要注意です!
まとめ

繰り返しになりますが、特に断熱性能の高い住宅では、畳数表示のとおりの購入は、過剰投資になります。性能に合わせた、適切な出力のエアコンを選ぶことが重要だということを覚えておいていただければと思います。
それでも、断熱性能に合わせた出力のエアコンを選んだのに、あまり暖かくならないというケースもあります。それはなぜかという話は次回詳しくしたいと思います。次回は、気密性能とエアコンとの関係、既存住宅でできる断熱・気密対策、エアコン畳数表示の見直しの動きなどについて書く予定です。
それではまた!




