
少し前になりますが、スウェーデン、韓国、モンゴル、台湾からのお客さんがわが家の視察にやってきました。これまで、ヨーロッパからの友人が冬に遊びに来ても「暖かい家だね〜」と言われない、といった反応はありましたが、わが家の仕組みに興味を持った複数の国の人が一緒に見学して感想を聞いたのは初めてでした。
その中で、スウェーデン、韓国、モンゴルのお客さんのコメントが面白かったので、今日は、それらを共有しながら、コメントの背景にある、その国の断熱事情を見てみます。
スウェーデン:“It’s dangerous!”
まずは、スウェーデンのお客さんのコメントです。
「スウェーデンではこういう家は普通だよね?」というこちらの問いに、「はい、ふつうです」
そうですよね。北欧には私たちも仕事であちこち行っていますが、(場所にもよりますが)日本よりもかなり寒い気候に合わせた家づくりが行われています。冬は夜がとっても長く、天気が良くないことも多く、気温は−20度なんかは当たり前。でも家の中は全然寒くないです。
家で過ごす時間が長いからか、室内を快適に、居心地がよい場所にして、リラックスして過ごせるようにする。そのプライオリティが高いと思います。
だから、もちろん断熱材は厚く入っているし、木製サッシのトリプルガラスという、性能とデザインを両立した窓も一般的になっています。ヨーロッパの家というと、石造りのイメージがあるかもしれませんが、かわいい木造住宅も多いのです。

実は、まさきさんが初めてエコハウスについて聞いたのは、北欧の家の話でした。外がマイナスになって室内は省エネなのに暖かくすごせるという話を聞いたのがきっかけとなり、住宅と断熱の取材を始めたのです。まさきさんと同じように、日本でも北欧の家に学び、高性能な家を建てるようになった工務店や会社もありますね。
しかし、紹介したかったのは「ふつう」というコメントではありません。まさきさんが、わが家の換気システム(詳しくはこちら)を見せながら、家の前がこんなに交通量が多いから、空気をきれいにして家に入れてくれる換気システムがなかったら、家の中の空気は悪かっただろう、という話をしたときに「Yes, it’s dangerous!(危険だよ=健康に害があるよ!)」と言われたことです。
日本では、わが家のように幹線道路沿いにもたくさん家があります。大抵は利便性や駅からの近さ、土地の面積などで経済的価値が決まってくるので、音や空気といった環境的な要素が価値に反映されることは多くありません。一方で、スウェーデンを含めたヨーロッパでは、空気質や騒音、日射取得できるかといった住環境が土地の価格にも反映されています。それをこのコメントで再確認したというわけです。
韓国:「床がちょっと冷たい」
これまで、わが家にやってきたお客さんはみんな、「床暖房入っているの?」と聞かれるくらい、真冬でも床が温かいのが自慢でした。しかし、韓国からのお客さんに「床がちょっと冷たい」と言われました!(注:床の表面温度は20℃以上あります)。これは初めての体験です(笑)。
それもそのはず、韓国では「オンドル」という床暖房システムが昔から使われていて、床が温かく、一部屋だけでなく家全体が暖かい「全館暖房」が当たり前です。日本に暮らしている、韓国人の友人も、冬は韓国にいる方が、外は寒くても暖かく過ごせると言っています。

オンドルは、昔はかまどで火をたいて床の通路に温かい空気を暖炉のように送り込んでいました。そして床の下には蓄熱できるように石が敷いてあり、石焼ビビンパのような仕組みで暖めていたのです。今は、電気やガスのボイラーでお湯を沸かしてパイプを通して流しています。日本のように「一部屋だけ温めてあとはガマンして光熱費を下げる」のではなく、家では暖かく過ごすというのが当たり前になっているんですね。
とても温かいし、家の中で寒暖差がないから、日本と違ってヒートショックが少ないのですが、問題もあります。韓国は、日本の本州より寒いところが多いので、全館暖房をするとエネルギーがたくさん使われ、電気・ガス代など、冬の光熱費が高くなるのです。
冬の(全館暖房の)光熱費が高くて大変!という実感があるからか、韓国では断熱に関する意識が高まっていて、日本よりも断熱に取り組むスピードが速いのです。そのため韓国では、日本よりもずっと早く、断熱性能の基準を義務化しています。
モンゴル:「ここは−20℃にならないの?」
最後に、モンゴルからのお客さんからのコメントです。まさきさんが「川越は夏の暑さが厳しく、冬は寒い」と言ったら、「冬は何℃くらいになりますか?」という質問が出ました。「寒いと−5℃くらい」というまさききさんの答えに、「ここは−20℃にならないの?」と驚きの声が!(そして、それに驚くまさきさん!)。
モンゴルについて詳しく聞く時間がなかったので、ちょっと調べてみましたが、モンゴルでは夏は暑く、冬はとっても寒くなります。最高気温は夏は40度、風の最低気温はマイナス30度にもなるそう。また、1日の寒暖差が大きくて、夏でも雪が降ることがあるとのこと。だから冬の気温の当たり前が全然違ったんですね。それから夏の川越の暑さには驚くだろうと思ったら全然驚かなかったのも納得です。(もちろん湿度は違うので体感はまた別だと思いますが。)

モンゴルの建物といえば伝統的なゲル(遊牧民であるモンゴルの人々の移動式住居)を思い浮かべますが、ゲルでさえ、フェルトのような断熱材を重ねてかぶせたり、床に色々なものをレイヤーにして重ねたりして断熱し、厳寒の気候に対応しています。冬のゲルの中は暖かいと聞いたことがあります。
断熱の重要性を肌で感じているからか、実は、モンゴルでは2009年から断熱基準が設けられ、国をあげて建物の断熱に取り組んでいます。日本はこれから、2025年の4月に初めて義務化されることになるのですが、人々の断熱に関する意識はまだまだ高くありません。日本よりもずっと進んでいますね!

まとめ
今回、わが家にやってきたお客さんたちは、断熱が進んでいる国、または、どんどん進みつつある国で、住宅や断熱に関わっています。初めて見た日本の家が、あまり典型的ではないわが家でしたが、何か参考になればよいと思いました。
どうやら今月は、断熱を頑張ろうと考えている日本の工務店の人たちが見学にくるらしいです。やっぱり、真夏と真冬はわが家の繁忙期ですね(笑)。